診療内容・特色
特徴
上部消化管(食道・胃・十二指腸)、下部消化管(小腸、結腸、直腸)、肝臓・胆のう・胆管・膵臓(肝胆膵)などの消化器および乳腺の悪性(がん)・良性疾患だけでなく、ヘルニア(脱腸)や肛門(痔)などの疾患を対象に診療を行なっています。
とくに肝臓・胆道・膵臓領域の腫瘍などの高難度手術から、胃癌・大腸癌・虫垂炎・胆石・ヘルニアなどの鏡視下低侵襲手術まで幅広い手術を、安全性と根治性を目指した最善の外科診療を提供しています。
安全かつ有効な医療を提供するために外科的治療だけでなく、内科や放射線科との協力のもと病院総力をあげて、化学療法や放射線治療などを含めた集学的治療にも積極的に取り組んでいます。
診察内容
【胃癌・大腸癌】
当院では早くから消化管手術領域に内視鏡手術を導入し、現在も多くの症例で腹腔鏡下に手術を行っています。開腹手術に比べて傷が小さいため術後の傷の痛みも少なく、身体に優しい低侵襲手術を積極的に行っています。
【肝臓癌】
肝細胞癌や転移性肝癌などの肝臓の手術では、3D-CT(血管再構築画像)を用いて、手術前に肝臓の立体的な画像化と正確な肝切除容量・予定残存肝容量を計算し、画像支援ナビゲーションのもと安全かつ確実な肝切除術を行っています。
詳しくご覧になりたい方は、こちらのページをご参照ください。
→肝胆膵外科お教えします
→肝臓のナビゲーションサージェリー
→【ウェブ版公開講座】沈黙の臓器—肝臓の「がん」について
【胆道癌、膵臓癌】
膵頭十二指腸切除術や膵体尾部切除術、肝切除術などの高難度手術を行っています。決してあきらめないがん治療を目指して、手術で切除できない進行がんと診断された患者さんでも、化学療法と放射線治療でがんを小さくしてから切除するコンバージョン手術も積極的に行っています。
詳しくご覧になりたい方は、こちらのページをご参照ください。
→【ウェブ版公開講座】沈黙の臓器—すい臓の「がん」について
【乳癌】
乳房を温存する縮小手術を積極的に行っています。また不必要な腋窩リンパ節郭清を省略するために、センチネルリンパ節生検を行っています。
【胆のう結石、胆のうポリープ】
腹腔鏡下胆嚢摘出術を標準術式としています。術後早期(3〜4日)の退院も可能です。
【ヘルニア】
ほとんどの症例で腹腔鏡下ヘルニア根治術(TAPP法)を行なっています。本術式は鼠径法に比べて傷が小さいため術後の傷の痛みも少ないだけでなく、腹腔内から両側のヘルニアを観察し手術することができるという利点があります。術後早期(2〜3日)の退院も可能です。
詳しくご覧になりたい方は、こちらのページをご参照ください。
→鼠径ヘルニアとは
【虫垂炎、胆石性胆嚢炎】
救急患者さんの受け入れも積極的に行い、急性虫垂炎や胆嚢炎などの緊急手術も多く行なっています。ほとんどの症例で腹腔鏡下手術を行っています。
手術実績
当院の年間の外科手術件数は年々増加してきており、2022年は過去4年間で最も多くなっています。なかでも緊急手術の件数が大幅に増加しています。奈良市、大和郡山市、天理市などの近隣地域からの救急患者さんを積極的に受け入れ、急性虫垂炎や急性胆嚢炎、大腸がんによる腸閉塞などの緊急手術を行っています。
また、全手術件数における腹腔鏡手術の割合は年々増加しており、2022年は約52%の手術を腹腔鏡で行っています。腹腔鏡手術は、開腹手術に比べて傷が小さいため術後の傷の痛みも少なく、身体に優しい手術です。このため手術後の入院期間も短くなり、早期退院・早期社会復帰が可能となっています。本年は、胃がんは83%、大腸は87%の症例が腹腔鏡で手術を行っています。鼠径ヘルニアや胆嚢炎の手術も増えており、ほとんどの症例が腹腔鏡手術で行っています。

2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | |
総数 |
156 |
173 |
173 |
204 |
腹腔鏡手術 |
42 |
49 |
67 |
107 |
緊急手術 |
19 |
8 |
25 |
48 |
|
2019年 |
2020年 |
2021年 |
2022年 |
1. 胃 |
8(3) |
9(6) |
3(3) |
6(5) |
胃全摘 |
5(1) |
2(1) |
0(0) |
3(2) |
胃切除 |
3(2) |
7(5) |
3(3) |
3(3) |
2. 大腸 |
23(12) |
25(18) |
42(27) |
43(40) |
結腸切除 |
8(4) |
19(15) |
17(8) |
22(19) |
直腸切除・切断 |
4(1) |
3(1) |
8(7) |
2(2) |
虫垂切除 |
11(7) |
3(2) |
17(12) |
19(19) |
3. 肝胆膵 |
26(17) |
22(16) |
25(16) |
38(26) |
肝切除 |
3(0) |
1(0) |
4(0) |
2(0) |
胆嚢摘出 |
19(17) |
17(16) |
17(16) |
30(25) |
胆管切除・再建 (胆道拡張症、膵管胆管合流異常) |
0(0) |
0(0) |
0(0) |
2(0) |
膵頭十二指腸切除 |
1(0) |
1(0) |
3(0) |
3(1) |
膵体尾部切除 |
3(0) |
3(0) |
1(0) |
1(0) |
4. 腹壁 |
26(8) |
29(9) |
34(19) |
44(30) |
鼠径ヘルニア |
21(8) |
24(9) |
31(19) |
39(28) |
腹壁瘢痕ヘルニア |
5(0) |
5(0) |
3(0) |
5(2) |
5. 乳腺 |
15(0) |
16(0) |
17(0) |
17(0) |
乳房手術 |
15(0) |
16(0) |
17(0) |
17(0) |
6. 肛門手術 |
12(0) |
16(0) |
5(0) |
4(0) |
痔核 |
12(0) |
16(0) |
5(0) |
4(0) |
7. その他 |
46(2) |
56(0) |
47(2) |
55(9) |
※手術件数と()内は腹腔鏡手術件数
内視鏡治療実績
当科では、大腸および胆管の内視鏡検査も行なっています。
大腸内視鏡検査は、検診あるいは便潜血陽性や血便を認める方、手術後の定期検診の患者様を対象に行なっています。鎮静剤を使って痛みを和らげて処置しています。検査中に大腸ポリープが見つかった場合は、ポリープ切除を行なっています。また、大きなポリープや早期の大腸癌の場合は、粘膜切除術も行なっています。基本的には日帰りで行なっていますが、大きなポリープを切除した場合や切除箇所が多い場合は、1泊入院していただくこともあります。
胆道内視鏡は、総胆管結石による閉塞性黄疸、肝機能障害などを認めた場合、十二指腸乳頭部を切開して結石を採石するほか、胆管癌による胆道閉塞を認めた場合、胆管ステントを挿入留置して減黄処置を行うときに用います。
|
2019年 |
2020年 |
2021年 |
2022年 |
大腸内視鏡検査 |
||||
総数 |
299 |
276 |
197 |
196 |
大腸ポリープ・粘膜切除術 |
114 |
90 |
85 |
88 |
大腸ステント |
3 |
8 |
1 |
4 |
内視鏡的逆行性胆道膵管造影 (ERCP) |
||||
総数 |
13 |
24 |
18 |
14 |
乳頭切開・総胆管結石採石術 |
10 |
22 |
16 |
14 |
今後の目標
これからも患者さん一人一人と誠実に向きあい、質の高い最善の外科診療を安全に提供できるようベストを尽くします。
地域の皆様の外科救急診療に貢献するために、より多くの救急患者さんを受け入れ、迅速に対応していきます。
病院(ホスピタル)は患者さんのためにあるということ、患者さんの心を理解し、温かく思いやりのある心(ホスピタリティ)で接することを心がけています。患者さんの信頼と期待に応えるよう、誠心誠意、取り組んで参ります。
文責 外科部長 山田高嗣